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詩人会議 2022年9月号 特集 詩の力 ことばの恵み

詩人会議 2022年9月号 特集 詩の力 ことばの恵み


●詩作品


漁(すなど)り  白石小瓶


はっとして自転車を降りたのは
川の浅瀬に
はげしい静けさをみつけたから

微動だにせず
獲物のわずかなきらめきを待ちわびる
あれは 青鷺

せかいの一郭を治めるように
頑健で 悠長で
くずおれない意志の屹立

岸辺から距離をおき
かれをとりまく時間を
深々と呼吸させてもらう

たえまない流れの韻律
水けをおびたはつ夏のひかり
木々の葉をくぐり抜ける風

日常にたちこめる非日常の
ことばになおせないけはいに
思わずことばで触れてみたくなる

それが詩といういきものなら
目醒めるやいなや生(お)いそだち
せかいを産みなおそうといきみだすはず

くずおれそうな地平の上でも
青鷺になりすまし
佇ちつづけていられるだろうか

眼に映るありさまの前を
刹那 過(よ)ぎる
視えない事実を漁るために






●編集手帳

☆若い頃から詩が好きだったり、気づかぬうちに詩が傍らにあったり、高齢になって詩に目覚めたりと、私たちの、詩との出会いはさまざまですが、それは詩がつねに、身のまわりで息づいていてくれたおかげでしょう。
☆それらの言葉に励まされ、自身の生き方が変わってしまうこともあります。詩との出会いとは、運命的なものであるとも言えます。今号の特集作品、エッセイを読んでいると、その人それぞれの思いが、わがことのように伝わってきて、詩が人の精神、心をどれほど豊かにしてきたかが分かります。ここから詩の力、言葉の恵みが見えてきます。
☆松下育男さんから素敵なエッセイをいただきました。小学生時代から今日に至るまで、詩を愛してきた日々が記されています。途中つらい時期がありつつも詩は生の支えだった。そしていま、詩の教室で「詩を書いていて苦しんではいけない」「心弾ませて」書こうと、若い人を励ましています。苦しみを潜り抜けたうえでの、詩への希望です。(柴田三吉)



特集 詩の力 ことばの恵み

白石小瓶 漁り 4  
丸山乃里子 押し花 5  
前田新 言葉の力 6  
はなすみまこと よどむなかで 7  
小田凉子 羽 8  
坂田トヨ子 言葉 言霊 9  
こまつかん わかれ道で沈黙するな 10  
黒鉄太郎 私は怒っているのだ 11  
上野崇之 国語の教師の端くれとして 12  
田辺修 私は赤ちゃん 13  
いわじろう 信じるものは救われる 14  
松村惠子 生きる 15  
上岡ひとみ 形にできなかった言葉 16 
 呉屋比呂志 ウチに来ないか 17  
床嶋まちこ 心を調えて 18  
青井耿子 ここでも鶴が恩返し 19  
三ツ谷直子 地上の星 20  
伊藤眞司 生きるとは 21  小
林その 杏畑 22  
いいむらすず 嘘 23  
白根厚子 マトリョーシカの平和 24  
大西はな 月 25  
秋野かよ子 台所のモノローグ 26  
妹背たかし もし 詩がなかったら 27


エッセイ
詩とともに生きる  松下育男 28
詩という営み  小泉克弥 36
ことばに半生を支えられて  野口やよい 38
反復と沈黙と  武田いずみ 40
巡り合って あなたの詩に  宮武よし子 42
私にとって詩は歌うものだった  佐藤和英 44
心の扉をノックして  遠藤智与子 46
役に立てる詩の力  田上悦子 48
詩は今日 どこに立つか  田畑悦子 50
私的に詩の恵みを受けて  菅原健三郎 52
今こそ、ホモ・サピエンスの詩に帰るべき  白永一平 54
多くの人に創造の喜びを  岡田忠昭 56
ロシアのウクライナ侵攻に抵抗する詩の言葉  小森陽一 58
素直なことばと信じて  伊奈かっぺい 60





エッセイ 有間皇子自傷歌に寄せて  那賀須泥 74


一般詩作品
河合恒生 生きる 62  
櫻井美鈴 飛行機乗り 63  
狭間孝 八月・松林山春日寺にて 64
清水美智子 ツバメからの伝言 65  
西明寺多賀子 戦争は損する 66  
高嶋英夫 戦争はだめだ 67  
浦西登 母死す5行詩 68  
斗沢テルオ コンクリートアース 69



諷刺詩
奥田史郎 空蚤 80  
立会川二郎 社員番号22W4349 81  
吉村悟一 金塊たちの涙 82
志田昌教 スマホ戦争2022 83  
都月次郎 ダンカイソルジャー 84


ひうちいし 坂田トヨ子 神崎英一 上條陽子 岡村啓佐 加瀬谷久仁子 ねなしかづら 清水マサ 洲史 86


新入会作品 三村あきら ハマダテツロー 118


私の推す一篇 2022年8月号 115


御供文範小詩集  つかれた心/はぐれ柿の話/安らかであれ/草笛が聴こえる 70


四季連載 詩の見える風景・四度目の秋――安倍元総理の死に  杉谷昭人 92


詩作案内 わたしの好きな詩 岸田衿子  飯泉昌子 94


詩作入門 自分を支えるために  渋谷卓男 96


現代詩時評 怠けアリの献身 立原直人 98
詩  集  評 生を肯定的に捉え、生き抜く 魚津かずこ 100
詩  誌  評 消え去ることの無い詩を 後藤光治 102
グループ詩誌評 季刊が定着 または目指す 河合政信 104


自由のひろば 選・都月次郎/おおむらたかじ/草野信子 106
滋野さち/髙橋宗司/天王谷一/村田多惠子/大野美波/加澄ひろし/村口宜史/やまくま/有原悠二


公開書簡 ウクライナ戦争の停戦を仲介してください 120 寄贈詩誌・詩書 116 詩人会議通信 122 
読者会報告 8月号 芝原靖 126 ●表紙/扉カット/表紙のことば 宮本能成 128 編集手帳 128

テーマ : 詩集・詩誌・詩に関する本
ジャンル : 小説・文学

詩人会議 2022年8月号 特集 現代の戦争

詩人会議 2022年8月号 特集 現代の戦争


空の瞳  佐川亜紀

赤ん坊の瞳
真新しい宇宙
洗われた青空
金色の橋がかかる夕焼け空
この世界はふしぎな生き物で
いっぱい
瞳はきょろきょろしながら
寄り道しながら
思いがけないおもしろさを発見する

敵をまっすぐ高速で探す現代の空の瞳
ドローンが飛び交う戦場
途中に赤ん坊がいても
狙いに無駄はなく
効率的に瞳が突き刺さる
青空を見上げたまま横たわる子ども
赤ん坊と一緒に血にまみれた母
大国の強欲が命を奪いつづける 
大国の侵略に抵抗するために
性能を上げる無人兵器

わたしもいつしか遠回りや
横道めぐりをめんどくさがっている
近道の落とし穴に入っている
宇宙が傷だらけになる時代
沖縄の海が基地でつぶされる
星の奪い合い
いのちがますます見えなくなるとき
空の瞳に地球一粒の涙がたまる
目には童がいつまでも必要
海で生まれたばかりのぬれた瞳
人のおぞましい欲望をこえた
漆黒の宇宙の宝石




●編集手帳

☆ロシアのウクライナ侵攻は泥沼化し、市民への殺戮も止まりません。今号を発行する頃には戦争が終結していることを願いつつ、「現代の戦争」を特集しましたが、期待は裏切られています。
☆この背景には軍事同盟の拡大と各国の覇権争いがあり、分断の元凶となっています。大きな目でみれば「人類」という種の愚かな行いということになるでしょう。気候危機や環境危機も差し迫っているなか、世界は今こそ英知を結集して戦争を止めなければなりません。
☆長沢美抄子さん、岡本厚さんには、厳しい現状分析のみならず、希望のありかを見つめるエッセイをいただき、会外の詩人の方々からも現実と真摯に向き合う作品をいただきました。皆さまのお力添えに深く感謝しております。
☆文学を通して人と人が手を繋ぎ、大きな網を編んでいくこと、その網の目を一層密にしていくことで、世界の落下を食い止めるセーフティーネットを作っていくこと。私たち詩人会議はそうした広がりを目指しています。(柴田三吉)


●もくじ

特集 現代の戦争

谷川俊太郎 事情と業 4  
佐川亜紀 空の瞳 5  
石川逸子 森に雨が 6  
草野信子 手のひら 7  
河津聖恵 ウクライナの緑 8  
上手宰 ここは学校 9  
齋藤貢 偽りのことばに 10  
佐々木洋一 よういちさん? 11  
本多寿 静かな家 12  
彼末れい子 地球教室 13  
秋亜綺羅 現代の戦争 14  
小田切敬子 ミータンと プーチンと ケーコタンと 15  
網谷厚子 天空マリーナ 16  
宇宿一成 レトリックなし 17  
中原道夫 争い、そして戦争 18  
斗沢テルオ 人類が戦争を知らなかったら 19  
甲田四郎 ロシアの 20  
熊井三郎 ケーツケェ! 21  
杉谷昭人 姉妹の兵士 22  
後藤光治 向日葵畑 23  
中上哲夫 郵便局にて 24  
水崎野里子 逆転のウーマンリブ 25  
嶋岡晨 大花火 26  
佐相憲一 元型のその先 27  
八木忠栄 立ち止まってみよう 28  
芝憲子 本当の森 29 
荒川洋治 薬師 30  
瀬野とし 土 31  
雨野小夜美 この世からぼくを守る歌 47  
照井良平 貧しい武器 48  
岡田忠昭 呼びかけ 49  
木村孝夫 地球儀よ 50  
菅原健三郎 私は飯を食う 51  
芝原靖 イマジンのこども 52  
秋野かよ子 殺される人間の観客にされて 53  
田畑悦子 蟻穴 54  伊藤眞司 戦争 55 
こまつかん 人道回廊 56  
いいむらすず 言葉は空を駆けて 57  
飯泉昌子 この瞬間も 58
秋乃夕陽 SNS 59  
春山房子 戦争と平和 60  
青井耿子 噛みしめる 61  
堤すみえ テレビの中の戦争 62  
妹背たかし プーチンのおなら 63  
山田よう 少年とネズミ 64  
上野崇之 蠅ではなく、人間だ 65  
白根厚子 日本でも起きたこと 忘れてしまったのか 66  
北村真 男 67  
清水美智子 さくら 68  
清水マサ 暴風 69  
佐藤一志 どの国でも 70  
松田研之 夏の一日 71  


エッセイ
空はまるごとひとつなのに――ロダーリの詩とウクライナ危機  長沢美抄子 32
「命こそ宝」である  岡本厚 40
侵略戦争の構図――日本の過去の戦争を省みて  奥田史郎 72
重い言葉に導かれて  柴田三吉 74
いまやハイブリッド戦争  河合恒生 76
平和は理性の側にある  青木みつお 78
ひとはなぜ戦争をするのか――アインシュタインとフロイトの往復書簡を読んで  榊次郎 80

報告
辺野古浜テントで高校生たちと  豊島晃司 86
「泊原発運転差止め」の判決が出て――泊原発反対運動を組織して  滝本正雄 90
広島市立中央図書館所蔵の峠三吉文学資料は広島の戦後史・文化史をひもとく鍵  池田正彦 92


ひうちいし 坂井勝 中村明美 彼末れい子 宮崎多賀子 黒鉄太郎 山﨑芳美 100

見る・聞く・歩く 小田切敬子 103

私の推す一篇 2022年7月号 125

中林千代子小詩集  父が私の中に/仕事のその後/うちの末っ子/詩集を編んで 82

地下室の窓 ウクライナ戦争と、私が希望を語れない理由  徐京植 96  

詩作案内 わたしの好きな詩 中村純  野川ありき 104

詩作入門 投稿 そして実作教室へ  小田凉子 106

現代詩時評 四頁舞台のデビュー 上手宰 108
詩  集  評 愛も決意も願いも場所は取らない くらやまこういち 110
詩  誌  評 明日を、平和を、あきらめないで 高田真 112
グループ詩誌評 困難な状況のなか なんとか産み出す 河合政信 114


自由のひろば 選・草野信子/都月次郎/おおむらたかじ 116
大木武則/橋本敦士/三村あきら/坂田敬子/サトウアツコ/上原翔子/大野美波/佐藤一恵/おおば游歩/西谷寿

詩人会議通信 126 読者会報告 7月号 小田凉子 131
●表紙/扉カット/表紙のことば 宮本能成 132 編集手帳 132



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詩人会議 2022年7月号 短詩112人衆

詩人会議 2022年7月号 短詩112人衆



●短詩

連れて来い   青井耿子
春よ来い、早く来い
ウクライナに平和を連れて来い。
核爆発のない世を連れて来い。
季節巡って、
傘寿、米寿。祝いの年も連れて来い。




古い版図   青木みつお
古い版図の愛称はウラジーミル
アラジンのランプといっていい
黒は白 闇は光になる
民衆は踊ればいいのだ
誰もこの快楽を知らない




友   秋村宏
風はどこへ行くのだろう
その終わりにはなにがあるのだろう
そう話してくれた人はいない




訪れ   秋乃夕陽
春の訪れは誰の心をも弾ませる
名もなき花は顔をのぞかせ
白くて柔らかな笑顔を見せる
暖かくなりつつある日差しとは裏腹に
未だ肌寒い大気に体を震わせながら




●編集手帳

☆今号より新編集部がスタートしました。私自身は30代のとき、8年ほど編集の作業に携わりましたが、今回は編集長を引き受けることとなり、その重責に身が引き締まる思いです。
☆本誌は長きにわたって、秋村宏さんに牽引してきていただきました。とりわけ新型コロナのパンデミックが始まり、編集会議も開けない危機のなか、毎号、充実した誌面を作っていただきました。そのご負担と苦労は大変なもので心より感謝申し上げます。また、自宅で校正等の作業をされてきた前編集部の方々、事務所の機能を守り、実務を担われてきた高橋和子さんと山崎由紀子さんにも感謝の言葉を贈りたいと思います。この間、本誌が順調に発行できたのもこれらの方々のおかげです。
☆編集方針にも書きましたように「地域の編集委員」を創設しました。各地の会員にお願いしたところ、多くの方から積極的なご参加と、温かい励ましの言葉をいただきました。早くも複数の企画案が寄せられ、順調なスタートとなっています。これらの提案を活かし、今後も魅力的な誌面作りをしていきたいと思っています。
☆第33回総会を前事務局長の南浜伊作さんから報告していただきました。課題は山積ですが、三浦健治運営委員長、洲史事務局長の展望を踏まえ、詩運動の充実と発展に向けて、会員・会友の力をさらに結集していきましょう。
☆新人賞・評論部門入選の石橋直樹さんは20歳の俊英。パウル・ツェランの強制収容所体験と詩を中心にして「失語」の意味、自らのものではない死を語ることは可能なのかと問う、真摯で哲学的な考察です。じっくりお読みください。
☆特集は恒例の「短詩」です。5行という制約のなかに、作者の凝縮された世界とさまざまな思いが描かれています。現在ロシアによるウクライナ侵攻という異常な事態が続いていますが、これらの作品にも暴挙への厳しい批判があります。この問題の本質をさらに考えていくため、次号では「現代の戦争」を特集します。
(柴田三吉)






●もくじ

特集 短詩――112人集
青井耿子 連れて来い 6  
青木みつお 古い版図 6  
秋村宏 友 6  
秋乃夕陽 訪れ 6
あさぎとち 悪者 7  
飯泉昌子 願い 7  
いいむらすず 不断の努力 7  
池島洋 生きる 7  
石木充子 気づけば 8  
石関みち子 夢は 8  
いしだひでこ 瑠璃色の再生 8  
伊藤公久 おくすり 8  
伊藤眞司 生命 9  
乾茂雄 山恋 9  
妹背たかし 侵略 9  
いわじろう あるじゃあないか… 9  
植田文隆 いつの日か 10  
上野崇之 遠い昔のはなし…ではなくて 10  
梅津弘子 平和は自分たちの手で 10  
浦西登 樹 10  
江本洋 ソメイヨシノ 11  
遠藤智与子 夜 11  
大嶋和子 死ぬときは 11  
大西はな ことばの壁なんど 11  
おおむらたかじ ああ、メーデー 12  
小田凉子 茜空 12  
小田切敬子 初夏のつるみがわ 12

加藤三朗 可視化 12  
加藤徹 叫び声を 13  
上岡ひとみ いつもの朝 13  
上手宰 おてつだい 13 
 神流里子 孫娘に 13  
彼末れい子 類語辞典 14  
北沢美佳 未来 14  
木村孝夫 十一年 14  
救愛 息子よ 14  
草倉哲夫 旅 15  
熊井三郎 さしず女房 15  
小泉克弥 已むに已まれず 15  
吉野兼 混芽 15  
小林その 何色も揃ったリボンがほしい 16  
こまつかん われわれ 16  

斎藤彰吾 百年桜 16  
西明寺多賀子 ナムアミダブツ 16  
坂田トヨ子 しっぽが 17  
桜陽 ひだまり 17  
桜井くに子 マトリョーシカ 17  
佐藤一恵 光のタクト 17  
佐藤和英 幸福のように 18  
志田昌教 認知症? 18  
宍戸ひろゆき 希望 18  
玄原冬子 三月 18  
芝原靖 夜は朝のために 19  
清水マサ 夕焼け 19  
白根厚子 春がやってくる 19  
新間芳子 明日まで 19  
菅原健三郎 穴があいた日々 20  
杉本一男 夢をみる 20  
鈴木太郎 ごがつのかぜ 20  
鈴木宏幸 消失点 20  
瀬野とし 哀しい車 21    

平等稲雄 僕は何をしよう 21  
平久悦 春の陽だまり 21  
平由美子 消えた春 21  
高嶋英夫 朝読 22  
田上悦子 新統一主義 22  
立会川二郎 転向から恭順へ 22  
田辺修 タンク地獄 22  
田畑悦子 雪えくぼ 23  
玉川侑香 むなしい 23  
檀允心実 炭酸の夢 23  
千葉昌秋 パンドラの箱の底から 23  
都月次郎 うっ くらいなあ 24  
照井良平 ポニー牧場の主 24  
床嶋まちこ 若いのは今 24
斗沢テルオ 地球大戦 24  

永井秀次郎 山 25  
中林千代子 春の憂鬱 25  
新見かずこ 希望のある暮らしを 25  
野川ありき 個   25  

狭間孝 「戦争」という手話 26  
河合政信 岸田くんの約束 26  
橋本健治 龍はどこにいる 26
ハマダ・テツロー あなたの顔 26  
春街七草 改めて感じた事 27  
柴田三吉 うつわ 27  
春山房子 ありがとう 27  
古久保和美 幸せのクローバー 27  
平和ねんじ いま 28  
細田貴大 通学 28  

まえだ豊 世界の立つ大将らは 28  
松村惠子 肩すかし 28  
はなすみまこと 新芽 29  
水崎野里子 短詩試作 29  
光谷公男 春 29  
南地心爽 仲間 29  
南浜伊作 鉄橋で 30 
呉屋比呂志 二〇二二年三月ウクライナ発テレビ画面 30  
宮本勝夫 温故知新 30  
村瀬継弥 家族の花見 30  
目次ゆきこ 願う 31  
森田和美 悲しみ 31  

安川登紀子 ひとは 31  
坂杜宇 若葉 31  
山崎由紀子 日本橋散歩 32  
山田みとり 遺作 32  
山田よう ロシアの侵略 32  

吉村悟一 ぼく9条の目 32  

洲史 欅 33  
白石小瓶 商売 33  
塚田英子 命 33  
中村明美 統計的詩論 33



第33回総会報告
文書による総会の試み  第32回総会事務局長 南浜伊作 66
詩を広げる取り組みを  第33回総会事務局長 洲史 68
「詩人会議」誌の充実、発展に向けて――会員、会友、読者の皆さまへ  第33回総会編集長 柴田三吉 70
編集の抱負  編集部員 地域編集委員 112
ともに詩の基盤を  第33回総会運営委員長 三浦健治 72



第56回詩人会議新人賞  評論部門・入選
パウル・ツェランのいない世界で――「帰郷」をめぐって 石橋直樹 34


詩人会議グループ詩詩誌作品集16誌  選 秋村宏
安仁屋眞昭 海岸の闊歩 50 
 田崎以公夫 おしゃべり 52  
國森伸 果樹を植える 53  
合田博之 あの日のみんなへ 54  
永瀬つや子 無花果 55  
坪井あき子 ことば遊び 55  
大場百合子 私を 56  
平田正昭 遠い昔 56  
斉藤明典 ヒガンバナ 57  
刀根蛍之介 新入社員のストライキ 58  
吉田豊 煙 59  
のざきつねお 姉との別れ 60  
浜本はつえ 海に返す 61  
大原加津緒 いきしちに 62  
樋野修 ホテル・オールド・ジャパン 63  
小野啓子 綿毛 64



小川桂子 沖縄は沖縄のもの 48

見る・聞く・歩く 清水真理 82

書評
宇宿一成 
    北村真詩集『朝の耳』 74  
    大西はな詩集『誰かが呼ぶ』 74
佐々木洋一
    中林千代子詩集『名づけながら』 75  
    いいむらすず詩集『海とシラスと汚染水』 75

ひうちいし
 原圭治 河野俊一 小泉和美 狭間孝 戸田志香 横田重明 都貴美夫 池田正彦 熊井三郎 76

上山雪香小詩集  夫婦の不思議/雨の故郷/白い月/赤信号で/虹 44

詩作案内 わたしの好きな詩 宮沢肇  水衣糸 84

詩作入門 夜星川  宇宿一成 86  私の推す一篇 2022年6月号 83

現代詩時評 王はいっとき民は千年 立原直人 88  
詩  集  評 シンボルスカを本棚から 魚津かずこ 90
詩  誌  評 「氷山」のような詩の創作を 後藤光治 92
グループ詩誌評 痛み・怒りを、体現し書く 河合政信 94

自由のひろば 選・おおむらたかじ/草野信子/都月次郎 96
大木武則/加澄ひろし/村口宜史/天王谷一/村田多惠子/ゆきのさきこ/三村あきら/橋本敦士/有原悠二/和田平司

新基地建設反対名護共同センターニュース 49 詩人会議グループ一覧 105 詩人会議通信 106  
●表紙/扉カット/表紙のことば 宮本能成 120 編集手帳 120 読者会報告 6月号 表3

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ジャンル : 小説・文学

詩人会議 2022年5月号 特集 いま私が書く時

詩人会議 2022年5月号 特集 今私が書く時




●詩作品

あなたへ    中村明美

この世界にあるものは
ひとがつくったものだから

桜子さんはそう言うのだ
街はクリスマスの夜で
ひとり子の生誕を祝って だから
この世界は偽物なのかと 
問うたのだ

ひとがつくったものなら
ひとはつくりかえることができる
桜子さんはそう言うのだ

娘を自死で失いました
嗚咽して
切れてしまった電話

その声を抱いて
その重さにつまずいて 
街の喧騒を歩いた話をした

その死が
変えようのないものであるなら
ひとは そこから
つくりかえることができる

こんなにも 生きづらい社会を
ひとがつくってしまったのなら
ひとが もう一度つくりなおす
いまはかなしみに在るそのひとが
いつか 私らの社会のこどもの
ほんとうの親となって 生きなおす 
その意味を ひとは生きられる
 
桜子さんは そう言って テーブルの 
古い傷を ゆっくりと なぞった





●編集手帳

☆今月の特集は「いま私が書く詩」です。みなさん、それぞれ日頃の題材を深めておられます。それらは独自で、多様です。
☆「戦争反対! ロシアのウクライナ侵攻に抗議します」ほかに寄せられたのは、他国の領土を戦争によって奪おうとし、核使用も辞さない独裁者プーチン大統領への抗議、平和を望む言葉です。
 いまのロシアには言論の自由がなく、政権のプロパガンダのみ流しつづけているようです。それで思い出すのはかつて侵略戦争をしたわが国も一方的な政治宣伝、ウソを国益のもとで流し、それを信じた国民には飢えと死が待っていたのです。いま現政権は、ウクライナ問題に乗じて米国の核兵器の共同運用や敵基地を先制攻撃するなど、憲法九条を変えようとする動きをしています。
 詩作者として、事実(情報戦争の中身も)をみきわめ、いのちを、平和を重んじる日常を送りたいものです。
☆第56回詩人会議新人賞の詩、評論部門が決まりました。58頁参照。みなさんの今後の発展を願っています。(秋村宏)




●もくじ

特集 いま私が書く詩
中村明美 あなたへ 4  
勝嶋啓太 こうやって世界は滅んでいくのかもしれない 5  
熊井三郎 席取りゲーム 6 
木村孝夫 時の糸 7  
都月次郎 鬼喰らわん神異聞 8  
櫻井美鈴 トシドン 9  
丸山乃里子 桜 10  
おおむらたかじ 雪ん中 11  
岩堀純子 聞こえない、言葉が 12  
玄原冬子 福音 13  
いだ・むつつぎ ヒメジョオンの花のような女の子 14  
小田凉子 空白のパズル 15  
鈴木義夫 弁当 16  
上野崇之 いま、教育と〝怒り〟を書く 17  
立原直人 電凸 18  
田辺修 火付盗賊改方 19  
西明寺多賀子 春の草 20  
いわじろう 十年位止まってくれないかな 21  
南浜伊作 秘かな悦楽 22  
芝原靖 灯台 23  
浦西登 樹 24  
呉屋比呂志 九月の終わりの虹の会 25  
秋野かよ子 死にかた 26  
春山房子 残されて独り 27  
三浦千賀子 介護を受けるということは 28  
田島廣子 施設でクラスター発生 29  
かわかみよしこ 春の嵐 30  
水崎野里子 撃て! タンバリンを 31  
妹背たかし 今では、ぼくたちと 32  
比留川美津子 花色の旗 33  
田畑悦子 地球 34 
檀允心実 涙のお守り 35  
伊藤眞司 となりの のりこさん 36  
奥田史郎 再会 37  
松田研之 風光る 38  
玉川侑香 「仙人」とよばれた男 39  
くらやまこういち 引き受けたこと 引き受けること 40  
床嶋まちこ 気持ちのいいおつき合い 41  
あべふみこ 魔法の水 42  
畑中暁来雄 前日 43  
山口賢 私はうたうよ 44  
榊次郎 眠れない夜 45  
清野裕子 うた 46  
光谷公男 私の新春 47  
河合恒生 詩人会議 48  
白根厚子 書くって 49  
佐々木洋一 ごりごり 50  
清水マサ 雪道 51  
河合政信 死にたくない 52  
瀬野とし 風の音 53


エッセイ 茨木のり子と韓国詩  佐川亜紀 54


言葉 戦争反対! ロシアのウクライナ侵攻に抗議します  90


おはなし 核兵器の終わりの始まり(下) ――核兵器禁止条約発効後の世界と日本  川崎哲 78


新人賞 第56回詩人会議新人賞 58   総評 67  選評 68  選考経過 66
詩部門 入選  御供文範 役回り 59
     佳作  いいむらすず 肚を据えた日 61  やまもとれいこ 涙を流すキリン 63
         飯干猟作 歩兵銃 64
評論部門 入選  石橋直樹 パウル・ツェランのいない世界で――帰郷をめぐって 66



詩人会議グループ詩誌作品集
松尾静子 少女A 74  
工藤美春 ニラ 75 
斉藤範雄 赤い海 75


書評 宇宿一成 柴田三吉詩集『ティダのしおり』 98  三浦千賀子詩集『リュックの中身』 98


ひうちいし 宮本勝夫 渡部唯生 狼煙通信より 塚田英子 編集部 95


野口やよい小詩集  鵜/ふくらはぎ/沈黙/夜風 70


私の推す一篇 2022年4月号 99


詩作案内 わたしの好きな詩 八木重吉  あさぎとち 100


詩作入門 詩を書くって楽しいの? と聞かれて  照井良平 102


現代詩時評 ウクライナのためのレクイエム 立原直人 104
詩  集  評 忘れがちな生活の知恵 魚津かずこ 106
詩  誌  評 素材をいかに処理するか 後藤光治 108
グループ詩誌評 高齢がなんだ。元気だよ。充実の年だよ。 河合政信 110


自由のひろば 選・草野信子/都月次郎/おおむらたかじ 112
滋野さち/立会川二郎/坂田敬子/大野美波/村田多惠子/佐藤一恵/加澄ひろし


新基地建設反対名護共同センターニュース 89 寄贈詩誌・詩書 121 詩人会議通信 123 
読者会報告 4月号 芝原靖 126 ●表紙/扉カット/表紙のことば 宮本能成 128 編集手帳 128 声明 表3

テーマ : 詩集・詩誌・詩に関する本
ジャンル : 小説・文学

●自由のひろば ウツギの花  滋野さち -詩人会議2022年5月号より


●自由のひろば

ウツギの花      滋野さち

「あっけに切ねぇことはねかった」
と セキばあちゃんが言った。
しゅうと婆さまが
「もちっと米の入ったおじやが
       喰いたい」と言ったが
米がなんにもねかったんだ。
ウツギの葉っぱがモサモサする雑炊。
米のおじやを喰わせられないまんま
痩せてしゅうと婆さまは死んだ。

芋の蔓は炒めるとうまかった。
南瓜や芋はごちそうだった。
息子が戦地から帰らないうちに
しゅうと婆さまは死んだ。
息子が石ころ一つの骨箱で帰ったのを
知らないまま死んだ。

セキばあちゃんも九十才で死んだ。
タニウツギの濃いピンクが
あふれるように咲いていた。
茎が空洞だから
空木(ウツギ)というのだと
教えてくれた兵隊帰りの先生も死んだ。

津軽海峡を外国の戦艦が通った。
ミサイルが発射されたという
       ニュースを見ながら
煮込んだおじやを食べている。
肉も餅も入った贅沢なおじやだ。

雪の下で、ウツギはひっそりと
花芽をつけているだろうか。
何百年も濃いピンクの花を
     咲かせ続けるのだろうか。
 *あんなに切ないことはなかった







●選評

選評=草野信子
 戦中戦後の食糧事情。遺骨の入っていない骨箱。ここに描かれていることは、多くの人たちによって語られてきたことですが、改めて、その切なさ、悔しさが、胸に迫ってきます。本作に登場する人たちへの、滋野さんの愛惜の情が、詩の語り口に滲んでいるからでしょう。しゅうと婆さま、兵隊帰りの先生、何より、セキばあちゃんへの思い。ひとの死を繋いで描いた過去と、さらには、危機を実感しながらも志向する未来を描いて、一編が長い年月をたたえています。ウツギは、滋野さんに懐かしい記憶を呼び起こす花。空木(ウツギ)に過剰な意味を込めていないところにも好感を持ちました。


選評=都月次郎
 昔芋ばかり食べさせられていたので芋は嫌いだという人の苦労話を聞いたことがあるが、これは芋さえもご馳走だったという戦時下の東北の話。ウツギの葉の雑炊は、どんな味がしたのだろう。けして美味しくはなかったはずだ。淡々と描いているがセキ婆ちゃん(当時は若い嫁さんだったのだろう)の切なさが伝わってくる。現代の時間への切り替えもスムーズで、変わらずに咲きつづけるウツギの花が、バトンを渡している。


選評=おおむらたかじ
 ばあちゃんの方言から貧困な農のくらしを綴る。二連の具体も分かりやすく表現。「芋の蔓は炒めるとうまかった/南瓜や芋はごちそうだった」…芋は薩摩芋ですね。評者もおなじような体験を持つので十二分に納得。…息子は死んではいねえ…、と死ぬまで言い続けた老婆を知っている身としても。
 そしてウツギの話。津軽海峡の戦艦、ミサイル、贅沢なおじや…。
 ところで、終連、最後の二行はどうでしょうか。なくてもいいかな、と思いましたが。

テーマ : 詩・ポエム
ジャンル : 小説・文学

詩人会議 2022年4月号 特集 桜

詩人会議 2022年4月号


●詩作品

冬桜  瀬野とし


大空に三角凧が舞っている
大きな公園のひろば
隅の一角に 細めの木が七、八本
枝々から伸びた小枝の先に
ポツポツと 小さな八重の白い花
可憐な冬桜

木の前で
幼い男の子が 縄跳びをはじめた
「イチ、 ニイ、 サン、 …」
若い父と母が 声をそろえて数える
「ロク、 ナナ、 あー」
縄を足にひっかけて…
 
「とべた とべた じょうずにとべた」
母は 注(つ)ぎ分けた温かいコップを手渡し
「きれいねぇ」
三人で冬桜を見上げる

真っ青な空にちりばめた
小さな八重の白い花々
寒い風が来て 小枝ごと
花は揺れたが
散りはしなかった

この子は 大きくなった日に 
懐かしく思い出すだろう
冬桜のお花見を

そのとき 
冬桜は 伐られることなく 
残っているだろうか
公園にあるのは 
見事に散ることを称(たた)えられる
春爛漫の桜ばかり ではなく




●編集手帳
☆今月の特集は「桜」です。多くの人が咲くのを待ち、散るのを惜しむ。それぞれの〝花見〟が、暮らしのなかで描かれています。
 詩のなかには戦争と関連する作品がいくつもありますが、日本の国花とされる桜の、散る、美しさ、という死の思考を国が喧伝したことを表しています。
 桜井国俊さんが、気候温暖化と共に〝島々をふたたび戦場にするな〟と語られていますが、それは私たちの課題です。
☆川崎哲さんのおはなし(上・下)は、
’21年3月の〝ビキニデーin高知の全体集会〟でなされたものです。核兵器が作られてから76年になり、核兵器禁止条約にも加盟していないわが国で〝人間が作ったものだから、核兵器は100%なくすことができる〟という確信が湧いてきます。
☆明治神宮の森の伐採計画を、東京都の都市計画審議会が承認。樹齢百年の樹を千本も伐り、巨大なコンクリートビルをつくる。営利を得ようとするむきだしの欲望がみえてきます。自然を破壊する思考こそ伐採されるべきです。(秋村宏)



●目次

特集 桜
瀬野とし 冬桜 4  
宇宿一成 一輪 5  
佐々木洋一 ひぃらぁあん 6  
たなかすみえ さくらマンダラ 7  
野口やよい ジャカランダ 8  
春街七草 川崎の沖縄桜 9  
いしだひでこ 十月桜の夕暮れ 10  
赤木比佐江 裏庭の桜 11  
浜本はつえ 少女たち 12  
妹背たかし 山桜 13  
南浜伊作 校庭の桜並木 14  
高嶋英夫 桜、桜、桜 15  
佐藤和英 花筏 16  
飯泉昌子 今 誰かに 17  
坂田トヨ子 和子さんの桜 18  
菅原健三郎 すき込む 19  
植田文隆 きっと咲くはず 20  
あさぎとち おなじよに 21  
大道和夫 季節 22  
細田貴大 探しに行く 23  
松尾節子 桜 24  
奥村和子 李王妃方子 
南河内で歌う 25 
志田昌教 宮原小学校の桜 26  
宍戸ひろゆき 守るぞぼくらのさくらの樹 27  
狭間孝 海峡の桜 28  
滝本正雄 時代から観る桜とは… 29  
田辺修 桜太朗 30  
うえじょう晶 桜雨 31  
斗沢テルオ 桜とのソーシャルディスタンス 32  
長谷川節子 桜は咲いても 33  
石関みち子 桜に思う 34  
伊藤眞司 桜 35  
木村孝夫 夜ノ森駅 36  
白永一平 花おいびとの目に桜 37  
田島廣子 桜 38  
救愛 くちびる 39  
呉屋比呂志 黒田の百年桜 40  
上野崇之 延世大学の満開の桜の下で 41  
古野兼 うかれ浮き立ち 心覚え 42  
宮本勝夫 山桜 43  
水衣糸 桜坂 44  
白根厚子 寒立馬 45  
佐伯徹夫 さきはひ 46
白石小瓶 伯父を背負う 47  
いいむらすず 春の景色 48  
柴田三吉 つぼみ 49  


エッセイ
ササベ先生の山桜  彼末れい子 50  
「櫻の樹の下には」を巡って  後藤光治 52
むかし見た桜  上手宰 54
桜の警告――島々を再び戦場にするな  桜井国俊 57


おはなし 核兵器の終わりの始まり ――核兵器禁止条約発効後の世界と日本  川崎哲 84


エッセイ 松谷彊の思い出  清水マサ 80



嘲流 
青木みつお プラゴ語 78  
板倉弘実 その時、神風が吹いて 79


詩人会議グループ詩誌作品集
豊島晃司 分断を許さない 62  
桜井くに子 拝啓―伊藤久男様 63  
河内美子 残存 65  
岩橋健治 夜店 65  
神野忠弘 あさがお 66  
山内由美子 大根切り干し 67  
吉村悟一 つれづれの日々 68  
比留川美津子 ドクダミ考 69  
田畑悦子 あれから 70  
川田悦子 古い箪笥 72

ひうちいし 長沢美抄子 いいむらすず 青井耿子 上山雪香 佐藤誠二 98

佐藤誠二小詩集  大人だって夜泣きすることがある/俺って ちっちぇ人間なのだろうか/吾が人生日々好日と嘯くか 74

見る・聞く・歩く 田辺修 73

私の推す一篇 2022年3月号 83

詩作案内 わたしの好きな詩 長崎浩  豊田智慧子 102

詩作入門 書きたいことをどんどん  芝憲子 104

現代詩時評 「生きにくさ」の構造 立原直人 106
詩  集  評 暮れなずむ夕陽にも背中を押される感性 くらやまこういち 108
詩  誌  評 木々の声・人の言葉 高田真 110
グループ詩誌評 71号、94号 いずれも伝統の二誌 河合政信 112


自由のひろば 選・おおむらたかじ/草野信子/都月次郎 114
村田多惠子/村口宜史/御供文範/橋本敦士/有原悠二/三村あきら/西明寺多賀子/坂田敬子

寄贈詩書 97 詩人会議通信 123 読者会報告 2月号 佐藤和英 126 3月号 芝原靖 126 
●表紙/扉カット/表紙のことば 宮本能成 128 編集手帳 128 

テーマ : 詩集・詩誌・詩に関する本
ジャンル : 小説・文学

●自由のひろば 鬼の酒盛り  村田多惠子 (詩人会議 2022年4月号より)


●自由のひろば

鬼の酒盛り  村田多惠子


鬼は誰の中にも棲んでいて
普段はのんびり寝ながら暮らしているが
何かの拍子で目を覚まし
騒ぎ出す、暴れだす
大きくなって手が付けられず
そのうちに主の人間は乗っ取られ
鬼そのものになってしまう

夜になると鬼は人から抜け出し集まって
焚火の周りで歌って踊って酒を飲む

困ったことにこの頃は
はやり病のせいなのか
それとも貧しさ寂しさのせいなのか
鬼になってしまう人が増えてきた
こんな怒りっぽい人だっけ
レジで店員に怒鳴ったり
ネットで誰かを攻撃したり
誰かを苦しませ悲しませて喜んでいるのか
それは鬼の思うつぼ

いやいや、自分だけはそうならないと
誰が言えよう
我が身の中の鬼を手なずけて
小さいままで暴れぬように

きれいな音楽を聴いて
物語を読んで
遠くの景色を眺めて
たまには友に優しい言葉をかけて

鬼の酒盛りに混じらぬように




●選評

選評=おおむらたかじ
 鬼は誰の中にも棲んでいて、時に騒ぎ暴れる。人間が鬼になったりする。この頃は、はやり病のせいか、貧しさ、寂しさのせいか鬼になってしまう人が増えてきたという。鬼にならぬよう、「きれいな音楽を聴いて/物語を読んで」芸術に親しもう。自然に親しみ友をいつくしみ、鬼になるな、鬼の酒盛りに混じるな、の呼びかけ。論理展開にムリがなく、納得できます。面白い。


選評=草野信子
 理性のコントロールが難しい、誰の中にもある情動を「鬼」と呼んでいます。「鬼そのものになってしまう」人が増えてきたことへの危機感。丁寧な展開で、村田さんの心の痛みは多くのひとが共有できることと思います。評者もそのひとりですが、同時に、自分の中の鬼だけではなく、外に跋扈する鬼について考えざるを得ない現状であるということも思います。


選評=都月次郎
 なるほどと納得させられる作品。誹謗中傷。その先には誰でもいいから他人を殺して、地獄への道連れにという最悪の鬼。これはきっとカラカラに乾いたこの現代社会や、人殺しのゲームにどっぷり浸かっているせいなのではないかと思っている。ひとの心に潜む鬼のイメージを鮮明に描いて見せてくれた。


自由のひろば」投稿規定 
 
 [自由のひろば] へのご投稿ありがとうございます。
   毎月たくさんの作品が届き、うれしく思つています。

投稿の手引き」

*どなたでも自由に投稿できます。

*〆切日は毎月末日です。

*一人ひと月に一篇、一行17字×40行以内、
 手書き外原稿も可ですが、無地の紙で縦方き
 にしてくださいで原稿川紙伜は不要です。

*題名の下に名前(ペンネーム可)を入 れる。
  原稿の末尾には住所・氏名 (本名)・年齢・職業・電話番号を明記してください。
 

※郵送でお願いします。
 郵送先
 〒170-0004
東京都豊島区北大塚2-18-3-202 
 封筒に「詩人会議編集部・自由のひろば係」と朱書してください。

*作品は未発表のものに限ります。グループ・同人誌等に発表予定の作品もご遠慮下さい。

*毎年12月号誌上で、年間最優秀作品・優秀作品を発表(賞品贈呈)します。

テーマ : 詩・ポエム
ジャンル : 小説・文学

詩人会議 2022年3月号 特集 学校

詩人会議 2022年3月号 特集 学校



●詩作品

いちねんせい  草野信子


いつからか
わたしは ね、と話している

自分のことを
はなちゃんは ね、 
はな ね、と 言っていたのに

クラスのみんなで 
さかさまことば を考えた と話している
わたし負けましたわ 
ダンスがすんだ

わたしは ね、
くまのまく って 考えた
熊がかくれている幕のことだよ

幼稚園でひろげた
絵本の物語が
まだ 胸にあるのだろう 

なはのはな って どうかな と
私は 言ってみる  
那覇の はなちゃんのこと

那覇は 知らないだろう と思ったのに
知っているよ おきなわの なは
テレビの天気予報に
出てくる

それから

なはのはな 
那覇にも きっと 
わたしと同じなまえの子がいるね
と うれしそうに 言う




●編集手帳

☆今月の特集は「学校」です。一人の人間が成長していく過程での学校における出来事は年月と共に熟成され、心のなかにしまわれてあるのでしょう。その独自な体験やおもいは、さまざまな作品になっています。
 それは「正しいことは正しいという/わるいことはわるいとゆうせいかつをしていこう。」(K)や「国会の多数をにぎる政権与党の意志で教育を動かすことが合法化された」(石山久男氏)なかで、個的な自由意志を伸ばすよりも、すべておなじ考えにしていくという教育がなされつつある、という現在の問題を考える基になるのではないでしょうか。
☆オミクロン株の感染が急増しています。「東京新聞」によると、新型コロナウイルスの3回目の接種率が、わが国全人口の2・1%で、先進国(経済協力開発機構OECD)最下位だそうです。事実を明らかにせず、いのちを重んじない政府を許せません。
☆本紙発行日が遅れがちです。ご容赦ください。(秋村宏)



●もくじ

特集 学校

草野信子 いちねんせい 4  
野口やよい チイセミ先生 5  
木村勝美 学校という場所 6  
風野真季 分教場 7  
春街七草 親友よ 8  
呉屋比呂志 キャンプファイヤーの夜 9  
田辺修 光る廊下 10  
奥田史郎 ハイカラ先生のクラス 11  
山﨑芳美 あの日のこと 12  
山田よう 理科係のM君 13  
浜本はつえ 教室の窓 14  
柳瀬和美 校庭 15  
櫻井美鈴 校庭 16  
上山雪香 弱き者 17  
秋山陽子 小さな教室 18  
竹井みよ子 宝物 19  
古久保和美 無我夢中だった 20  
小田凉子 きまり 21  
坂杜宇 弁当 22  
三浦千賀子 新たな挑戦 23  
織田英華 廊下から外階段へ 24  
床嶋まちこ 学校 25  
目次ゆきこ はじまり 26  
永山絹枝 春は生きている 27  
白根厚子 月食 28  
中村明美 ねこの学級日誌 29  
芝原靖 つながる 30  
いわじろう 変われない 31 
 松村惠子 深呼吸 32  
高嶋英夫 学校の青い空 33  
宮武よし子 学校 34  
清水マサ 秋の夕暮れ 35  
佐藤和英 夜営の調べ 36  
北沢美佳 ドイツ語の一般講座 37  
刀根蛍之介 児童歌 38  
森下厚司 消えた学校 39 
千葉昌秋 水漬くかばね 40  
上野崇之 枚方の「金八先生」と呼ばれて 41  
梅津弘子 続く教科書問題 42  
畑中暁来雄 イデオロギー(社会的意識諸形態) 43  
志田昌教 島原半島廃校紀行 44  
おおむらたかじ ストーブ・駅 45  


小論エッセイ
戦後教育の原点から教科書を考える  石山久男 46  
教科書をめぐって起きていること  鈴木敏夫 50
学校って、何?  おぎぜんた 55
小さな美術館にて  北村真 57  
「春へ」に寄せて  井上さだ子 59  
「遇し」と「お遇し」の違い  滝本正雄 61  
コロナ禍の学校  戸田和樹 63
大学教員生活33年  河合恒生 65
青年の学びと社会参加のために  山下正寿 68
今できるところから  加藤徹 72  
学校について私たちは何を忘れてしまったのか  立原直人 74



詩人会議グループ詩誌作品集
大野とも 畑で 90  
青木まや 林檎畑 90  
五十嵐冴子 子どもたちへ 91  
大川陽一 旅人 92  
ノブキソウイチロウ リベルタン 93  
川澄敬子 オーボエは風の音色 95


書評 佐々木洋一
原圭治詩集ポエジー&フォトギャラリー『記憶の暦』 100  
坂田トヨ子詩集『余白』 100
彼末れい子詩集『オウムガイの月』 101  
清野裕子詩集『半分の顔で』 101


ひうちいし 白根厚子 高鶴礼子 齋藤貢 平湯克子 池島洋 96

こまつかん小詩集  てのひら/旅/あいたい/ぬくみ/再会/じーっと/ときめき/せらぴい/いのちの時間を 80

地下室の窓 苦しい想像力――2021年の終わりに  徐京植 84

詩作案内 わたしの好きな詩 浅井一雄  熊井三郎 102

見る・聞く・歩く 宇宿一成 99

詩作入門 見たことを曲げない力  玉川侑香 104

私の推す一篇 2022年2月号 79


現代詩時評 進歩の中で変化しないもの 上手宰 106
詩  集  評 詩の原点とは何だろう 魚津かずこ 108
詩  誌  評 詩は作文ではない 後藤光治 110
グループ詩誌評 前向きで、思慮深く、元気 河合政信 112


自由のひろば 選・都月次郎/おおむらたかじ/草野信子 114
壱貫亨治/大野美波/植田文隆/立会川二郎/橋本敦士/加澄ひろし/和田平司/坂田敬子/御供文範


新基地建設反対名護共同センターニュース 89 詩人会議通信 123 
●表紙/扉カット/表紙のことば 宮本能成 128 編集手帳 128 

テーマ : 詩集・詩誌・詩に関する本
ジャンル : 小説・文学

●自由のひろば 夢の中の子供  壱貫亨治 -詩人会議2022年3月号より


●自由のひろば

夢の中の子供  壱貫亨治


暮らしを紡いでいた
坂道ばかりの街
嫌いだ嫌いだと
日毎夜毎に言っていた

そんな月日も
それなりの思い出として
過ぎるだけ過ぎ
穏やかな水平線の彼方

夢を見れば
未だに皆子供の姿だから
不思議だ不思議だと
家族の写真を眺めていた

いつかの僕みたいに
迷子になって泣きながら
嫌いだ嫌いだと
誰も彼もに言っていた

あの街へ
君は
帰ろうとして
坂道の途中






●選評

選評=都月次郎
 壱貫さんの作品はいつもリズミカルで、それが根っこのような気がする。こんな思いでは誰にもあるので、すっと入ってくるだろう。終連の四行はそれだけで見事に完結していて、言葉の後ろの世界まで描き出して見せてくれた。


選評=おおむらたかじ
 一連、坂道ばかりの自分の街を嫌いだと言っていたという子供の頃のこと。時を過ぎ夢を見れば、未だ子供の姿だから不思議だと家族の写真を見る。終連、みんな嫌いだと言っていた「あの街へ/君は/帰ろうとして/坂道の途中」。この坂道の途中がいいですね。


選評=草野信子
 あまり多くを語らないこと、形式を整えて書くことで、濁りのない詩となっています。結果、読む人に手渡されるのは、イメージとしての街です。おそらく、作者にとっても、かつて暮らした街は、どこか、具体の手触りのないものなのでしょう。けれども、何もかもが嫌いだったその街へ、帰ろうとしている。自分を「君」と相対化して書いた最終連の現実感が、一編の詩を引き締めています


テーマ : 詩・ポエム
ジャンル : 小説・文学

     
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